犬がいつも自分のことを気にしてくれるというのは、一緒に暮らす人間にとってはうれしいものです。それだけ愛着を持ってくれているのだと思うと、よりいっそう愛おしくなります。犬が人間との間に愛着の絆を作るのはとても自然なことであり、またそれが犬と人間と仲間にしてきたのです。
愛着を感じている対象がいなくなると、わたしたち人間はさびしく感じます。幼児の場合は愛着の対象である親がいなくなると不安になるでしょう。ですが、そのうちに戻ってくるということを学習することで、自力で乗り越えていきます。
これは犬の場合も同様です。
ところが、この不安がずっと持続して、ストレス行動を示す場合があります。このように愛着の対象からの分離によって引き起こされるストレス行動のことを、「分離ストレス行動」と呼びます。一般的には「分離不安」とも呼ばれています。
分離ストレス行動には、以下のようなものがあります。
これらは分離によるストレスによって生じた行動ですが、分離ストレスを感じている犬には、一般的なストレス行動や症状もよく見られます。
ストレスが限界を超えることをオーバーストレスといいますが、オーバーストレスを見分けるサインは以下の通りです。
それでは、犬はなぜ分離ストレスを抱えるようになるのでしょうか。分離ストレスのリスクファクターは以下の通りです。
分離不安ストレスを防ぐには、1歳になるまでの間、我慢できないほどの時間をひとりにしないということです。
幼少期のストレスフルな体験は、脳のストレス媒介システムである副腎皮質刺激ホルモン放出因子に持続的な変化をもたらすということがわかっています。
夜寝るときには犬をケージなどで寝かせるようになどと言われることがありますが、これは分離ストレスのリスクファクターを増大させます。犬を迎え入れたときから、人間のそばで寝かせてあげましょう。
それでは、すでに分離ストレス行動が見られる犬については、どのように対処したらいいでしょうか。まず第一に重要なのは、ストレスレベルを下げることです。それだけで、多くの症状は大幅に改善されます。
ストレスレベルを下げるためには、食事時間と散歩時間をきちんと決めて、規則正しい生活をおこなうこと、静かな場所をゆっくり歩く、のんびり散歩をおこなうこと、犬が静かに落ち着けるように住環境を整えること、そして叱ったり命令したりせずに、穏やかに接すること、などを確実に実行しましょう。
トレーニングやドッグスポーツなどは、たとえおやつをつかった「犬にやさしい」やり方であっても、ストレスになります。また、ドッグランなどで走らせたり、旅行や外出に犬を同伴したりするのも、犬を興奮させてストレスをかけます。それよりも犬をゆっくり休ませてあげましょう。この休息が非常に大切です。
犬を人間から隔離すると症状は悪化しますので、サークルやクレートは撤去して、すべての部屋に自由に行き来できるようにしてあげましょう。寝るときにも寝室に入れてあげます。犬が不安そうにしていたら、そばに付き添ってあげます。犬をひとりにしておく時間が最小限になるように、工夫してください。
室内にいるときは、人間の声や音、テレビの光などを極力少なくし、犬が静かに過ごせるようにします。家族の言い争いや喧嘩なども症状を悪化させますので、気をつけましょう。家族のメンバー全員で、思いやりを持って穏やかに犬に接するように協力しましょう。
こうした暮らしを何ヶ月か続けていると、犬は次第にリラックスしてきます。そうなったら少しずつ留守番時間を延ばしていきます。留守番時間は、人間が外出している間、鳴いたり家具を齧ったりせずに、ゆっくり寝た状態で待っていられる範囲内にとどめます。留守番中の犬の様子を動画撮影するといいでしょう。
もし分離ストレス行動が見られたら、それは留守番時間が長すぎるということです。耐えられないほど長いあいだ留守番をさせると、ストレス症状が悪化しますので、慎重にすすめましょう。また、留守番時間は長くても6時間以内にとどめます。それ以上になると、どんな犬でもストレス行動が増えます。
犬も同居人もお互いに、楽しく過ごせるように、常に思いやりと配慮を持って接したいものです。
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