よく、「疲れた犬はいい犬だ」(犬を疲れさせると、家では寝て過ごす)と言われています。
そう信じている人も多いかもしれませんが、本当にそうでしょうか。今回は運動と興奮について考えてみようと思います。
ボール投げや追いかけっこなどの運動をおこなうと、体を動かすのに必要な酸素を筋肉に届けるために、たくさんの血液を送り出そうとして心拍数が上がり、その酸素を取り込もうとして呼吸が速まります。
激しい運動をしたときは、多くの酸素が必要になるので心臓や呼吸がさらに早まり、活性酸素が発生することになります。多すぎる活性酸素は体にさまざまなよくない影響を与えます。
激しい運動には興奮が伴いますが、この興奮がさらに犬たちを苦しめることになります。
興奮すると脳内にドーパミン(快感物質)が分泌されます。ドーパミンは脳内麻薬と言われますが、この快感が癖になってしまうのです。
脳を興奮させる物質が優勢になると、脳の感覚が鈍くなり、正常な判断ができなくなります。他方で、エンドルフィン(鎮痛効果)の影響で、体がつらくても運動を続けられるようになります。
結果、快感を求めていくらでも遊びたいという状況になるのです。
ボール遊びを例にとると、次のようなことが起こっていると思われます。
・ボールを追いかけるのはつらいのに自分から走って追いかける→エンドルフィンの鎮痛効果がもたらす快感によりつらさを感じにくくなってさらに走る
犬が興奮しているとき、目は見開きギラギラとし、口は酸素を取り入れるために大きく開き(横に引き端にしわが寄ります)、舌がだらんと長くでます。
また、興奮したときに分泌されるホルモンが正常レベルに戻るには数日かかります。これも体にとっては負担です。
「犬には運動が必要」と言われていますが、興奮によるデメリットをよく見る必要があります。
では、運動を一切やめてしまって退屈しないでしょうか。犬も遊びたいのではないでしょうか。
そもそもこうした考え方を見直す必要があります。
「犬と遊んであげたい」や「遊んであげなくてはいけない」と思っているのは人間です。わたしたちが犬と遊ぶのではなく、犬たちの遊びは犬たち自身で決め、好きなときにするものです。
犬たちの遊びを観察していると、激しく走り回ったりせずに、落ち着いて穏やかに楽しんでいることがわかります。
例えば、匂いを追跡したり、落ちている何かを齧ってみたり、生き物を観察したり、土を掘ってみたり、草の上に転がってゴロンゴロン背中をこすりつけたり、ぬいぐるみを自分で飛ばしてみたり。
遊びというのは本来、心身がつらくなるのもではなく、気分がよくなり心豊かになるものだと思います。
「疲れた犬はいい犬だ」というのは、疲れきって休んでいる状態のことを指しているにすぎません。
疲れ切るのではなく、犬たちが五感を使って心地よく遊びを楽しめるということが大切です。
犬も人ものんびり歩き、日光を適度にあび、いろんな匂いを楽しんで、自然のものを感じながら体を無理なく動かすことが、犬に必要な「運動」だと思います。
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