「おすわり」「ふせ」「待て」「お手」
犬を迎えたら、まずこうしたコマンドを教えないといけない。そう思っている方は多いかもしれません。
実際、しつけ本やネットの記事にも、「まず最初に覚えさせましょう」と当たり前のように書かれています。
でも私たちは、こうしたコマンドは、犬に教える必要はないと考えています。
むしろ、教えようとすることで、犬に大きなストレスや負担を与えてしまうことになります。
ここでは、 なぜコマンドはいらないのか、そしてその代わりに何を大切にしたいかをお伝えします。
なぜ「コマンドが必要」と言われているの?
まずは、多くの人がコマンドを教えようとする理由を整理してみます。
他者へ迷惑をかけないため
たとえば、
- 散歩中に他の犬や人間に飛びつこうとしたとき
- 来客に興奮して走っていこうとしたとき
- 道路に飛び出ていこうとしたとき
そんな場面で、「待て」「おすわり」をさせれば、犬の行動を制止できると言われています。
犬をおとなしくさせるため
- ドッグカフェなどで静かにしてほしい
- ご飯やオヤツを待たせたい
- シャンプーや爪切りをスムーズにしたい
- 犬に要求を我慢させたい
そんなときにも、コマンドが必要だと考えられています。
人間の指示に従わせるため
- 犬には人間がリーダーだと教えなければいけない
- 人間社会のルールに従わせる必要がある
そう考えて、コマンドを通して犬を管理しようとする人もいます。

芸として楽しむため
ただ、「お手ができるとかわいい」「芸ができると面白い」という理由で教えることもあります。
コマンドには大きな弊害がある
一見、コマンドは犬のためのように見えるかもしれません。
でも実際には、犬にとって大きな負担になってしまいます。
1.犬は強いストレスを感じている
コマンドで指示されている犬をよく見てみてください。
- 舌をペロペロする
- 目を細める
- 顔をそらす
- あくびをする
そんな様子が見られることがありますが、これは犬がストレスを感じているサインです。

犬は、人間に行動を管理されたり、指示命令されたりすること自体に、大きな負担を感じます。
おやつで誘導されても、褒められていても、それは変わりません。
「やりたくてやっている」のではなく、
- やらないと悲しませたり困らせたりしてしまう
- やらないと怒られる
- やればおやつがもらえる
そう思って、必死にこたえているのです。
人間は、できて嬉しい!と思っていても、犬はずっと我慢しているかもしれません・・。
2.おやつ依存になりやすい
コマンドは、おやつを使って教えられることが多いです。
すると犬は、
- どうしたらおやつがもらえるか
- 次はいつおやつが出てくるか
そんなことばかり考えるようになります。
人の手元ばかり気にしたり、おやつが出てきそうな場面で異常に興奮したり・・。
おやつのことで頭がいっぱいなので、他への注意が散漫になったり、自分で考える力が身につかなくなったりします。
コマンド・おやつで、犬が指示に従い一時的に問題行動をやめますが、おやつが終わるとまた同じことが起こる。
そして人はまたおやつを出す・・これでは犬も人間もおやつ依存症になってしまいますね。
3.犬が自分で考えられなくなる
犬は本来、自分で状況を見て、考え、判断する力を持っています。
でも、いつも人にコマンドを出されていると、力を発揮できなくなってしまいます。
怖いとき、不安なとき、興奮したとき、本当なら、自分で距離をとったり逃げたり、落ち着いたりできるはずなのに、人の指示を待つようになってしまうのです。
しかも、コマンドでおすわりをさせても、犬の気持ちが落ち着いているとは限りません。
座っていても、内心は怖くてたまらなかったり、じっとしていても、興奮を必死に押し込めていたりするだけ・・。
そういうことはとても多いのです。
つまり、根本的な解決にはなっていませんし、犬が自分で考えて行動するということもできなくなってしまいます。
コマンドによって犬を賢くさせているかのようですが、逆に犬の成長を大きく阻害していることになるのです。

コマンドを教えない代わりに大切にしたいこと
「コマンドを使わないなら、どうしたらいいの?」
そう思いますよね。
でも、必要なのは、犬をコマンドによってコントロールすることではなく、犬が困らなくて済むようにすることです。
コマンドが必要になる状況をつくらない
コマンドを出したくなるときは、たいてい犬が困っていたり、不安だったり、興奮したりしているときです。
だからまず、「なぜそうなっているのか」に目を向けて、寄り添ってあげてください。
例えば、他の犬に吠えてしまうなら、
- 人や犬の少ない時間に散歩する
- 距離を十分にとる
- 苦手な相手に近づけない
そうすれば、「待て!」と止めなくても済みます。
ドッグカフェなどは、犬が落ち着いていられないようなら、そこは犬にとって楽しい場所ではないのかもしれません。
無理に連れていくのではなく、犬が安心して過ごせる場所を選んであげた方が、お互いに心地良く過ごせます。
また、ご飯を食べる前に犬を待たせるメリットはありませんので、準備ができたらすぐにあげましょう。
ストレスの少ない環境をつくる
吠え、噛みつき、飛びつきなどのいわゆる問題行動は、不安・恐怖・興奮・ストレスなどが要因であることがほとんどです。
例えコマンドを使って一時的にやめさせることができたとしても、その場しのぎに過ぎず、むしろ犬をコントロールするようなことを続けることで、ストレス行動は悪化していきます。
何が犬にとってストレスになっているかを見極め、それを排除し、犬が落ち着いて過ごせるような環境づくりをすることが大切です。
犬が安心して過ごせるようになると、問題行動といわれるものも、自然と減っていきます。
犬の習性を知る
私たちがコマンドを使う背景には、「何でそんなことするの?」という、犬の行動が理解できないという気持ちがあるかもしれません。
しかし、それは犬にとってごく普通で自然なこと、という場合は多くあります。
私たちはつい、人間の価値観で「やめさせなきゃ」と考えてしまいます。
でも、本当は犬を変えるのではなく、犬という生き物の習性を学び、犬に対する見方を変えていく必要があるのではないでしょうか。
犬の習性については、犬の気持ちを知ろうのカテゴリーを参考にしてみてください!
犬と対等にコミュニケーションをとる
犬は、管理しなければならない相手ではありません。
とても賢くて、人間の気持ちや意思を読みとろうとしたり、人間が悲しい想いをしたらそっと寄り添ってくれたり、争いごとを仲裁しようとしたりと、とても優しい心をもっています。
だからこそ、
- 嫌なんだね
- 怖かったんだね
- こうしてほしいんだね
と、犬の気持ちを受け取ろうと耳を傾けてみてください。
そうやって、犬を管理するのではなく、対等な相手として関わる・・
すると犬は少しずつ安心し、自分らしく落ち着いて過ごせるようになります。
まとめ
コマンドを使うことは、一見「犬のために必要」のように思えるかもしれませんが、このように多くの弊害を抱えています。
是非、犬の行動をコントロールするためのコマンドを使うのではなく、犬自身が自分で判断して行動できる環境を整えてみましょう。
その方が、犬も人もずっと楽で、幸せに暮らしていけるのではないでしょうか。

