犬が吠える。物を壊す。落ち着かない。急に食べなくなった。
そんな時、「しつけが足りない」「わがままになった」と考えられてしまうことがあります。
でも実際には、犬は強いストレスを感じていて、そのつらさを行動で伝えているだけかもしれません。
犬は言葉で「つらい」「怖い」「疲れた」と言えません。その代わりに、体や行動の変化としてサインを出しています。
ストレスに早く気づき、その原因を減らしていくことは、犬の問題行動をなくすためではなく、犬が安心して幸せに暮らすためにとても大切なことです。
犬はストレスを、体と行動で伝えている
犬は、ストレスを感じると、まず小さな変化を見せます。
最初は気づきにくいことも多いかもしれませんが、意識して観察すると分かるようになります。
たとえば、こんな様子はありませんか?
- 体や顔がこわばっている
- 震える
- 背中の毛が逆立つ
- ひげが細かく震える
- 舌をぺちゃぺちゃする
- よだれが増える
- 白目をちらっと見せる
- 表情がぼんやりしている
- あくびが増える
- 同じ場所を何度も舐める
- 後ろ足で激しく掻く
- うろうろ歩き回る
- 隠れる、逃げる
- しっぽを追いかける
- 家具や物を壊す
- 夜中に吠えたり遠吠えしたりする
- 食欲が落ちる、むら食いになる
- 唸る、噛むなど攻撃的になる
これらは、「不安」「つらい」「怖い」などの気持ちをあらわすサインです。
中でも、あくび、舌をぺちゃぺちゃする、白目を見せる、うろうろするなどは、犬が「ちょっと嫌だな」「緊張するな」と感じ始めた時に出やすいサインです。
このような初期段階で気づけると、犬が限界まで追い込まれる前に助けてあげることができます。
ストレスが続くと心身に影響をきたす
ストレスが何日も、何週間も続くと、犬の体や心はどんどん疲れていきます。
すると、次のような変化が現れることがあります。
- 下痢、嘔吐、食欲不振、むら食い
- 食べ物への執着、拾い食い、異物を食べる
- すぐびくっとする
- 以前より吠えやすくなる
- 落ち込んだり怒ったりしやすくなる
- 唸る、噛むなどの攻撃行動が増える
- 体を舐め続ける、しっぽを追うなど同じ行動を繰り返す
- アレルギーや皮膚トラブルが悪化する
- 涙やけ、体臭、毛並みの悪化
ストレスが続くと、犬の体の中ではストレスホルモンが出続けます。その状態が長引くと、免疫力が落ち、胃腸や皮膚のトラブルにつながることがあります。
もちろん、病気が隠れていることもあるので、急な変化や体調不良がある時は、まずは動物病院で体の問題がないか確認してください。
でも、検査をしても原因がはっきりしない時や、何度も同じ症状を繰り返す時は、犬が慢性的なストレスを抱えていないか、一度見直してみてください。
犬にとって、どんなことがストレスになるの?
人間には何でもないことでも、犬にとっては大きな負担になっていることがあります。
犬がストレスを感じやすいものには、たとえばこのようななものがあります。
体の不快感や疲れ
- 痛みやかゆみ
- 空腹や胃腸の不調
- 睡眠不足
- 疲れすぎ
- 発情
- 暑さや寒さ
- 苦手なお手入れや治療
犬は、人間のように「少し疲れた」「なんとなく調子が悪い」と説明できないため、見過ごされてしまうことがあります。
そのため体の不調がそのままメンタルにあらわれやすくなります。
不安や予測できないこと
- 引っ越し、来客、模様替えなど急な環境の変化
- 留守番
- 何が起こるかわからない状況
- 急に怒られる、大きな音がする
- 毎日の生活がバラバラで落ち着かない
犬は、「何が起こるかわからない」「自分ではどうにもできない」という状況がとても苦手です。
たとえば、毎日突然抱き上げられる、急に知らない場所に連れて行かれる、いつ帰ってくるかわからないまま長時間留守番をする…
そんなことが続くと、犬はずっと緊張して過ごすことになります。
犬にとって刺激が強すぎる場所や活動
- ドッグラン
- パピーパーティー
- ドッグスポーツやトレーニング
- にぎやかなイベント
- ラフな遊び
- 動物病院やトリミングサロン
- シャンプー
- 車での移動
- 子どもとの関わり
- 知らない人や犬との接触
「犬が喜ぶはず」と思われていることでも、その犬にとっては負担になっていることがあります。
特に、怖がりな犬や、もともと刺激に弱い犬にとっては、ドッグランや大勢の犬とのふれあいは、楽しいどころか非常に強いストレスになります。
うれしい興奮も、実はストレスになる
意外かもしれませんが、「うれしい!」「楽しい!」という興奮も、犬の体には負担になります。
来客ではしゃぎすぎる、毎日大騒ぎして遊ぶ、ボール遊びで興奮しすぎる・・・そんな状態が続くと、犬はだんだん落ち着けなくなり、眠りも浅くなってしまいます。
興奮しやすい犬ほど、静かな時間や、何もしない時間を意識して作ってあげることが大切です。

犬のストレスを減らすために、今日からできること
ストレスサインが見られたら、何が犬を辛くしているのかを探し、その原因を減らしていくことが重要です。
静かで安心できる場所をつくる
犬がゆっくり休める場所を、家の中に用意しましょう。
- 人の行き来が少ない
- 大きな音がしない
- 犬が自分で自由に行ける
- 無理に触られない
そんな場所があるだけで、犬はかなり安心できます。
ベッドや毛布をいくつか置いて、犬自身が好きな場所を選べるようにするのもおすすめです。

しっかり眠れるようにする
犬は、1日の大半を寝て過ごします。年齢や個体差はありますが、犬には長い休息時間が必要です。
ストレスが強い時は、眠りが浅くなり、何度も起きてしまうことがあります。
テレビの音を小さくする、来客を減らす、寝ている時はそっとしておくなど、安心して眠れる環境を整えてあげましょう。

がんばらせない
ストレスを感じている犬に、
- 「慣れさせよう」
- 「頑張ればできる」
- 「練習すれば大丈夫」
と無理をさせると、さらに状態が悪くなります。
怖がっている場所や人、苦手なことからは、いったん距離を取ってください。
元気になるまでは、来客、遠出、知らない場所、苦手な犬との接触などはできるだけ避けて、安心できる毎日を優先しましょう。

ゆっくり散歩する
散歩は、たくさん歩くことより、「安心して歩けること」のほうが大切です。
静かな道を、犬のペースで、匂いを嗅ぎながらのんびり歩く。それだけでも、犬の気持ちは落ち着いていきます。
興奮しやすい犬ほど、刺激の少ない場所で、穏やかな散歩を心がけてみてください。

犬を変えるのではなく、犬が安心できる暮らしを
犬のストレス症状は、「問題行動」ではありません。
犬が「つらいよ」「怖いよ」「もう限界だよ」と伝えてくれているサインです。
だから必要なのは、犬を我慢させたり、しつけたりすることではなく、犬が安心して暮らせるように、人間側が環境や接し方を見直すことです。
ストレスの原因をひとつずつ減らしていくと、犬の表情は少しずつやわらかくなり、落ち着きを取り戻していきます。
犬が安心して眠れること。ほっとして息をつけること。
それが、犬にとっていちばん大切な「しあわせ」なのではないでしょうか。

