犬と暮らしていると、いろいろなお手入れが必要だと言われます。
「犬のために、ちゃんとやらなきゃ」
「小さいころから慣らさないと」
「嫌がっても我慢させるしかない」
そう思っている方も多いかもしれません。
でも、本当にそんなにたくさんのお手入れが必要なのでしょうか。
そして、嫌がっている犬に我慢させたり、押さえつけたりしてまで、やる必要があるのでしょうか。
私たちは、まずそこから見直してみてほしいと思っています。
まず考えたいのは、「本当に必要かどうか」
犬のお手入れは、「やったほうがよさそう」という理由で、当たり前のように続けられていることが少なくありません。
でも実際には、犬種や体の大きさ、毛質、暮らし方によって、本当に必要なお手入れはかなり違います。
たとえば、
- 大型犬やよく歩く犬は、散歩で自然に爪が削れる
- 犬の毛は汚れをはじき、自分で舐めてきれいにする
- 耳そうじや肛門腺しぼりが必要ない犬も多い
- 足ふきも、足を持って拭かなくても、タオルの上を歩いてもらえば十分なことがある
つまり、「犬と暮らすなら絶対にやるもの」と思われていることの中には、実はやらなくても困らないことがたくさんあるのです。
お手入れを考えるときは、まず、
- 「それは本当に必要?」
- 「その子の健康に関係ある?」
- 「犬がすごく嫌がってまでやる意味がある?」
と、立ち止まって考えてみてください。
犬が嫌がるのには、ちゃんと理由がある
爪切りやブラッシング、耳そうじなどを嫌がると、
- 慣れてないだけ
- わがまま
- 逃げずに我慢させないと
と思ってしまうかもしれません。
でも、私たち人間も、突然身体を触られてお手入れされたら不快に思うのではないでしょうか。
犬も同じです。
そんなとき犬は、ボディランゲージでちゃんと、「それ嫌だよ」「怖い」「やめて」と伝えています。
それに人間が気づかなかったり、「犬のためだから」と続けてしまうと、少し嫌だったことが、“とても嫌なこと”になってしまいます。
お手入れ嫌いは、こうして嫌がっているのに続けられた結果、苦手になってしまうことがとても多いのです。
だから、「慣らさなきゃ」と思うより先に、犬の様子をよく見て行うことの方が大切です。
無理やりお手入れに慣らす必要はない
犬を押さえつけたり、嫌がっているのに続けたりしてしまうと、かえってお手入れがどんどん苦手になってしまいます。
特に、
- 足をぎゅっと握る
- 無理な方向に体を引っぱる
- 顔を押さえる
- 逃げられないように抱え込む
- 犬に確認せず急に始める
こうしたことは、犬にとってとても怖く、大きなストレスになります。
たとえば爪切りなら、
- 人間が切りやすいように足を持ち上げるのではなく、自分の姿勢を変えて、犬が自然な体勢のままでいられるようにする
- 足を握るのではなく、そっと触れる
- 「少し切らせてね」と声をかけて、犬の様子を見ながら始める
そんな小さなことだけでも、犬の負担はずいぶん変わります。
大切なのは、人間の都合で進めるのではなく、犬のペースで、「今なら大丈夫そう?」と確認しながら進めることです。
嫌がったら、その場でやめる
犬が、
- 顔をそむける
- 体を固くする
- 逃げようとする
- あくびや舌なめずりをする
- 唸ったり噛もうとしたりする
そんな様子を見せたら、「嫌だ」というサインです。
そのときに、「あと少しだから」と続けてしまうと、犬は「嫌だと言っても聞いてもらえない」と感じてしまいます。
そうすると、お手入れだけでなく、人に触られることそのものが苦手になってしまいます。
何より、気持ちを尊重してもらえなかったことで、犬の心が傷つきます。
ですので嫌がったら、その場でやめてください。
途中で終わっても大丈夫です。
続きは、犬が落ち着いてまた受け入れられそうなときに、数時間後でも、翌日でも、もっと先でもいいのです。
「今日は爪を1本だけ切れた」
「耳を少し見せてもらえた」
それで十分です。
本当に必要なお手入れは、最小限で、やさしく
もちろん、犬によっては必要なお手入れもあります。
小型犬なら爪切りが必要なことが多いですし、毛が伸び続ける犬はカットが必要です。耳のトラブルが起きやすい犬もいます。
でも、必要だからといって、無理やりやっていいわけではありません。
必要なお手入れほど、
- 犬が落ち着いているときに
- 素早い動きをせず
- 道具を急に近づけず
- ほんの少しだけ
- 犬が受け入れてくれる範囲で
進めることが大切です。
すでに苦手になってしまっている場合は、無理に家で頑張らなくて大丈夫です。
動物病院や、犬の気持ちに配慮してくれるトリマーさん、動物看護師さんにお願いした方が、犬の負担が少なく済みますよ。
ストレスが強いときは、お手入れは後回しでいい
不安が強かったり、環境の変化があったり、日常的にストレスを抱えている犬は、お手入れを受け入れる余裕がありません。
そんなときに、「慣れてもらわなきゃ」と頑張ると、ますます嫌になってしまいます。
命に関わることではないなら、お手入れはいったん後回しにしましょう。
まずは、
- 犬が安心して暮らせるようにすること
- 「この人は無理やりしない」と感じてもらうこと
その方が、結果的に、お手入れも受け入れてもらいやすくなります。
お手入れは「できるようにする」より、「嫌なことにしない」
犬のお手入れでいちばん大切なのは、「ちゃんとできるようになること」ではありません。
犬にとって、お手入れが怖いもの、嫌なものにならないことです。
- 必要のないことはしない
- 必要なことは、最小限にする
- そして、犬の「嫌だ」を無視しない
そうやって犬の気持ちを尊重していくと、犬は少しずつ、「この人は無理やりしない」「嫌なときはやめてもらえる」と感じるようになります。
すると、お手入れだけでなく、日々の暮らしの中でも、人への信頼が深まっていきます。
それは、犬にとっても、人にとっても、きっといちばんやさしい方法です。

