犬と暮らしていると、「人間がリーダーにならないといけない」「犬に上下関係を教えないと問題行動が出る」などという話を聞くことがあるかもしれません。
もしかすると、それを信じて一生懸命しつけを頑張ってきた方もいるのではないでしょうか。
ですが本当に、犬との関係に“リーダー”は必要なのでしょうか。
パックリーダー論とは何か
一般的に言われている「リーダー論」は、正式にはパックリーダー論と呼ばれる考え方です。
犬はオオカミが祖先であり、群れ(パック)の中でリーダーが他の個体を支配し、他の個体はそれに従うという構造で生きている・・
だから人と犬の関係でも、人がリーダーとして振る舞い、犬を従わせる必要がある。
このように考えられてきました。
そのため、
- マズルを押さえる(マズルコントロール)
- 仰向けにして抑えつける(アルファロール)
- リードを強く引いて従わせる(ジャーク)
といった方法で、上下関係を教えようとするトレーニングが広まっていきました。
リーダー論はすでに否定されている
しかし現在、この考え方はすでに見直されています。
たとえば、アメリカ獣医動物行動学会 は2008年に声明を発表し、
- ドミナンス(支配性)理論は誤解に基づいている
- それに基づくトレーニングは推奨されない
- むしろ攻撃行動を増やすリスクがある
と明確に示しています。
その背景には、
- 犬とオオカミは別の生き物であること
- 野生のオオカミにも強い支配関係は見られないこと
といった研究結果があります。
つまり、「支配して従わせる」という関係は、そもそも自然なものではないのです。
「リーダーになること」で関係が壊れる
リーダー論に基づいた関わり方では、
- 犬をコントロールする
- 行動を制限する
- 従わせようとする
といった関係になりがちです。
一見うまくいっているように見えても、実際には
- 恐怖や不安が増える
- 自分で考える力が落ちる
- ストレスが蓄積する
といった影響が出ます。
そしてそのストレスが、吠えや噛みつきなど、いわゆる「問題行動」として現れることも少なくありません。

「優しいしつけ」でも本質は同じ
最近では、罰を使わない「優しいしつけ」も広く知られるようになりました。
ですが、
- 行動をコントロールする
- 人の望む行動に導く
という目的がある以上、方法が優しくなっただけで、本質は変わっていないのです。
- 「リーダーとして支配する」のか
- 「優しくコントロールする」のか
違いはあるようでいて、どちらも“人が主導で犬を変えようとする”という点では同じです。
犬にリーダーは本当に必要?
では、犬はリーダーがいないと困るのでしょうか。
私たちは、犬にリーダーは必要ないと考えています。
犬は本来、状況を理解し、自分で考えて行動できる動物です。
ですが、
- ストレスが多い
- 不安が強い
- 行動を制限されている
こうした状態では、その力を発揮できなくなってしまいます。

大切なのは「対等な関係」と「安心」
犬と暮らすうえで本当に大切なのは、リーダーになることではなく、
- 犬の気持ちを理解すること
- 犬の「やめて」を尊重すること
- 安心できる環境をつくること
です。
犬が困っているときだけ、上からリーダーとして導くのではなく、同じ目線でそっと手助けする。
そんな関係の中でこそ、犬は本来の力を発揮し、落ち着いて暮らせるようになります。
犬と人は、支配と服従の関係ではなく、ともに暮らすパートナーです。
犬に従わせるのではなく、犬と分かり合おうとすること。
その積み重ねが、お互いにとって心地よい関係をつくっていくのではないでしょうか。

