犬にはシャンプーが必要。そう思っている方は多いと思います。
外を歩けば汚れるし、においもする。
人間も毎日のように体を洗うのだから、犬も同じように洗うべきだと考えるのも無理はありません。
でも、実は健康な犬にシャンプーはまったく必要ないのです!
むしろ、頻繁なシャンプーが皮膚トラブルやストレスの原因になることがあります。なぜそう言えるのか、犬の体の仕組みと具体例からみていきましょう。
人間と犬の体はまったく同じではない
まず、理解しておきたいのは、「人間と同じ基準で考えない」ということです。
犬は哺乳類ですが、皮膚の構造や体の働きは人間とは異なるのです。
犬の被毛は天然の防御システム
犬の体は、しっかりした被毛に覆われています。
この被毛には適度な油分が含まれており、
- 雨をはじく
- 泥が乾くと自然に落ちる
- 紫外線や乾燥から皮膚を守る
といった役割を担っています。
白い犬が雨上がりの泥んこで遊び、全身茶色になって帰ってきても、乾けば泥はパラパラと落ち、元の白さに戻ります。
これは被毛が正常に機能している証拠です。
界面活性剤を含むシャンプーで頻繁に洗うと、この天然油分まで取り去ってしまい、
- 被毛がパサつく
- 皮膚バリアが弱くなる
- 乾燥しやすくなる
という状態を招きます。
汚れをとるつもりが、守りを壊すことがあるのです。
犬の汗腺は肉球のみ
「犬は汗をかかない」とよく言われますが、正確には違います。
犬にも汗腺はありますが、人間のように全身からエクリン汗を出す構造ではなく、エクリン腺は肉球にしかありません。
緊張したときには、肉球が湿るのはそのためです。
ニオイの原因になるのは、皮脂腺やアクポリン腺から出た分泌物が酸化したり、皮膚常在菌によって分解されたりすることです。
つまり、においの仕組みは人間と似ていますが、「汗を流すために洗う」という発想は犬には当てはまりません。
犬は本当に“くさい”のか?
「犬はくさいもの」と思われがちですが、健康でストレスの少ない犬は、強い体臭を放ちません。
天気のいい日はお日様のにおい、雨の日は雨のにおいがする程度です。
では、あの強いニオイは何なのでしょうか?
ストレスと体臭の関係
犬を動物病院の診察台の上に乗せたとき、ぷーんと鼻を突くようなニオイがすることがあります。
あれは強いストレスがかかった瞬間に、ホルモン分泌が変化し、皮脂量が増え、酸化が進むために一時的に起こる現象です。
慢性的にストレスがかかっている場合は、日常的に体臭が強くなります。
それを「汚れ」と解釈し、シャンプーでとろうとするとどうなるでしょうか?
ニオイ対策としてのシャンプーが悪循環を生む
ストレスが原因で体臭が強まっている犬にシャンプーをすると、
- 洗われること自体がストレスになる
- さらにホルモンバランスが乱れる
- ニオイが強くなる
という悪循環に陥ります。
とくに、
- 迎えて間もない子犬
- 保護直後の犬
- 環境が大きく変わった犬
こうした犬は、不安が強い状態で、体臭がきつくなっていることもあります。
そのタイミングでシャンプーすると、ニオイ対策どころか、負担を重ねることになってしまいます。
ニオイが気になるときこそ、シャンプーするよりも、ストレスの原因がないかを見直す方がずっと効果的です。
汚れがひどいときは?
全身がひどく汚れている場合でも、まずは環境に慣れ、自分から家族に寄ってくるようになるのを待ちます。
焦らないことが大切です。
犬がリラックスしているときに、
- お湯で濡らして固く絞ったタオルでそっと拭く
- 部分的な汚れには泡立てた石鹸をタオルにつけてふき取る
これを少し繰り返すと、ほとんどの汚れは落ちます。
もし犬が嫌がるそぶりをみせたら、すぐに中止しましょう。無理をすると、タオルも人の手も嫌いになってしまいます。
基本的に健康でストレスが少ない犬は、基本的に洗わなくても清潔です。
皮膚疾患がある場合は例外
ただし、皮膚疾患がある場合は別です。
以前保護した犬は、
- 脂漏症
- マラセチア
- アカラス症
を併発し、痒くて引っかいた箇所が化膿して大変な状態になっていました。
この場合は獣医師と相談し、
- オイルパックで分厚く蓄積した老廃物を溶かす
- 薬用シャンプー(ノルバサン)で洗う
という治療を数回実施しました。
その後、頻度を減らし、最終的には週1回程度の入浴のみになり、半年ほどで症状は消失。脂漏症も数年後には完治しました。それ以来、シャンプーも入浴もしていません。
重要なのは、漠然と洗わず、シャンプーの仕方、頻度、シャンプー剤の選び方なども含めて、獣医師とよく相談すること。そして方針に納得がいかない場合は、セカンドオピニオンをとるという姿勢です。
皮膚疾患の際の洗い方
嫌がらない状態で始める
まず、犬の体調がよくて、天気のいい日中に行うようにします。
天気が悪い日は乾きもよくないですし、低気圧の影響で精神的に不安定になっていることもあるからです。
事前にタオルやマットを準備して、犬に「お風呂に入ろうか」と声を掛けます。黙って連れて行くのではなく、最初にお伺いを立てましょう。
ここで嫌がったら延期します。
無理にやると、お風呂そのものが嫌いになり強いストレスになります。
短時間・低刺激を最優先に
小型犬なら1分以内、大型犬でも5分以内で流し始めます。
- 最初は洗面器やひしゃくでそっとかける
- 顔は手で優しく濡らす
- シャンプーは泡立ててから使用
- 原液を直接つけない
- お湯の温度は35度から37度(犬により異なるため体が冷えない温度を確認)
決して、体を押さえつけたり叱ったり雑な動きをしたりせずに、穏やかにやさしく声をかけながら、ゆっくり丁寧にやりましょう。
終わったら犬は身体をブルブルして自分で水分を飛ばします。
そうしたらすぐにバスタオルで包み、押さえるようにして水気をとるといいです。ゴシゴシこすると不快感を与えるので気をつけてください。
ドライヤーは体から離し、一箇所に当て続けないようにします。顔にかけると嫌がりますから、顔は手でガードします。ドライヤーは音が静かなものを選ぶようにしましょう。
皮膚疾患はストレスで悪化します。治療であっても、精神的負担を最小限にすることが不可欠です。
まとめ
健康な犬に、シャンプーは必要ありません。
ニオイが気になるときほど、シャンプーをするのではなく、生活環境とストレスを見直してください。
皮膚疾患がある場合にのみ、獣医師との相談しながら最小限で行います。
「洗うこと」がケアではありません。
犬の身体が本来持っている機能を尊重し、必要以上に奪わないこと。
それが一番自然で負担の少ないケアです。

