立ち上がるとすぐに起き上がる。
トイレまでついてきて中まで入ってくる。
お風呂のドアの外でじっと待っている。
「そんなに私のことが好きなの?」と嬉しい気持ちになるかもしれません。後追い行動は一見とても愛らしい行動です。
ですが、それが常に続き、姿が見えないだけで落ち着かなくなるなら、それは不安のサインかもしれません。
後追い行動とは
犬が同居人の動きを気にして、あとをついてくるのは、もともと備わっている習性です。
犬が家畜化されて人と暮らす長い歴史の中で、犬は共に動くようになりました。
その意味では通常の行動です。
ついてくること自体は異常ではない
かつて放し飼いが一般的だった時代、犬たちは特別なトレーニングをしなくとも、人と並んで歩いていました。
社会的な動物として、自然な姿です。
ですから、あとをついてくること自体を「依存」などと決めつける必要はありません。
問題は、安心して休めているかどうか
では、どんなポイントで見極めるかというと、犬が安心して休めているかどうかです。
- 寝ていても人間の動きにつられて起きてくる
- いつでもどこでも常についてくる
- 姿が見えないと落ち着かない
こうした状態なら、心が休まっていない可能性が高いです。
本来、安心していれば犬はぐっすり眠りますが、ひとりでいると不安でいてもたってもいられない状態なため、追い続けるのです。
後追いの背景にあるもの
過度の後追い行動は、甘えではなく、不安です。これは分離ストレス行動のひとつなのです。
安心できる場所を探している
人間でも、なにか怖い思いをした後には、不安になることがあります。そんな時は、誰かに一緒にいてほしくなったり、子どもならひとりでトイレに行けなくなったり、親と一緒に寝てもらいたがったりします。
犬も同じで、そんな時は人のそばにいようとするのです。ただこれは一時的なものなので、しばらくして落ち着いたらやらなくなるでしょう。
新しく迎えたばかりの犬も、環境の変化による不安で後追い行動をすることがよくあります。
とくにペットショップやブリーダーから迎えた子犬は、本来なら親兄弟といっしょにいる時期に人間の手によって引き離されて、まったく知らない場所に連れて来られる訳ですから、恐怖や不安から後追いをするのは当然のことです。
生活の中にある不安の種
一時的な恐怖や環境の変化などがなくても、常に不安を抱えている犬には、日常的な後追い行動が見られます。
後追い行動にお悩みの方のほとんどが、このケースだと思われます。
不安の原因といっても、とくに心当たりはないという方がほとんどだと思います。
ですが、同居人が「これぐらい大丈夫」と思うようなことでも、犬にとってはとても怖かったり、嫌だったりすることがたくさんあります。以下に、不安の原因となることをピックアップしてみましょう。
- ケージに閉じ込められる
- 叱られたり、怒鳴られたりされる
- 大きな音で驚かされる(天罰方式のしつけ)
- 人間の命令に従わせるトレーニング
これらは「しつけ」として、一般的に行われているようなことですが、犬にとっては予測不能で自分ではどうにもできない体験です。威圧的にコントロールされ続ける環境は、不安を生みます。
- 1日に6時間を超える長い留守番
- 常に監視されるような過干渉(かわいがる意味も含めて)
こういった長時間の孤立や過干渉も同様です。
安心とは、放っておかれることでも常に構われることでもなく、安全が保証された上で、自由がある状態です。
対処の基本は安心を増やすこと
犬の後追いを止めることが目的になると、行動の抑制に向かってしまいます。
必要なのは、不安を減らしてあげることです。
安心できる環境を提供する
安心は、しつけやトレーニングで得られるものではありません。
それどころか、かえって犬にストレスをかけ、不安を悪化させてしまうのです。
- ケージは撤去するか、常に開放しておく
- 大きな声や怖い声を出さず、常に穏やかに接する
- ダメ、ノーなどと否定語を使わず、肯定的・受容的な態度で接する
- オスワリ、マテなどのコマンドを出さず、犬が自分で考えて行動するのを待つ
もし、心当たりがあれば、徹底的に封印しましょう。このようなことをしなくとも、犬は人間のライフスタイルに適応して問題なく暮らすことができますよ。
犬の言葉で会話する
人間が無意識に行っている以下のような行動・・
- 犬の名前を何度も呼ぶ
- 「いい子~」などと繰り返し言う
- じっと見つめる
- 正面からまっすぐ近づく
- 手を大きく振り上げる
- 頭の上から手を伸ばす
これらは犬を不安にさせる行動です。
代わりに、犬と目が合った時に、ゆっくり瞬きをして目をそらしてみてください。これは、「あなたに好意を持っています」というシグナルです。
犬には犬の言葉である、ボディランゲージ(カーミングシグナル)を使って会話することで、犬に安心を与えることができます。
犬がついてきたときの向き合い方
犬が後追いをしてきたときに、ついて来られないようにすると犬はさらに不安になります。
トイレやお風呂も、ドアを少し開けておくか、中に入れてあげてます。
それで安心して落ち着くなら、それでいいのです。
夜もいっしょに寝てあげましょう。夜一人ぼっちで寝るのは、社会性が高い犬にとってはつらいものです。
自立を促すために、「ひとりに慣れさせなきゃ」と急ぐ必要はありません。
不安を抱えている状態では逆効果になりますし、犬の不安な気持ちを受け止めて、寄り添ってあげることが犬を安心させ、いい結果を生みます。
安心が積み重なってくると、犬は自然にひとりで過ごすことができるようになります。
自立は突き放すことで育つのではなく、安心の土台の上に育つものです。
まとめ:犬に寄り添い不安を和らげよう
後追い行動をなくすことのみに気を取られると、「ハウス」と命令してクレートに入れたり叱ったりしてしまいます。
それで直ったように見えるかもしれませんが、不安は消えたわけではありません。
見えなくなっただけで、心はそのままなのです。
同居人にできることは、困った行動をなくすのではなく、犬に寄り添い不安を和らげられるよう努めることです。
- 少しの間、抱っこする
- 一緒に横になってリラックスする
- リラクゼーション音楽をかけてみる
犬をよく観察して、どのようにしたらより安心するか、試行錯誤してみてください。
後追いを、かわいいで終わらせるのか、安心へつなげるのか。
その選択が、犬のQOLを大きく左右します。

