分離ストレスとは
犬がいつも自分のことを気にしてくれるというのは、一緒に暮らす人間にとってはうれしいものです。
それだけ愛着を持ってくれているのだと思うと、よりいっそう愛おしくなります。犬が人間との間に愛着の絆を作るのはとても自然なことであり、またそれが犬と人間とを仲間にしてきたのです。
愛着を感じている対象がいなくなると、わたしたち人間はさびしく感じます。幼児の場合は愛着の対象である親がいなくなると不安になるでしょう。
ですが、そのうちに戻ってくるということを学習することで、自力で乗り越えていきます。これは犬の場合も同様です。
ところが、この不安がずっと持続して、ストレス行動を示す場合があります。
分離ストレス行動の種類と見分け方
では、具体的にどんな行動がみられるでしょうか。
分離ストレス行動の種類
分離ストレス行動には、以下のようなものが該当します。
- 吠え、ピーピーいう鼻鳴き
- 家具、ドア、窓などをひっかく、掘る
- 歩き回る
- 目で人間の行動を追う
- 物を噛んだり壊したりする
- 不適切な場所での排尿、排便
- 玄関ドアや窓などをよだれでぬらす
- 立ち去ろうとすると噛んだり唸ったりする
- 脇腹を舐める、足を噛む
これらは分離によるストレスによって生じた行動ですが、分離ストレスを感じている犬には、一般的なストレス行動や症状もよく見られます。
オーバーストレスのサイン
ストレスが限界を超えることをオーバーストレスといいますが、オーバーストレスを見分けるサインは以下の通りです。
- 無気力
- 食欲不振
- 抑うつ
- 下痢・便秘しやすい
- 嘔吐
- 排尿排便回数の増加
- ストレス性大腸炎、消化器官の潰瘍
- 尻尾を噛むなどの自傷行為
- 前足をしつこく舐める
- 過度のグルーミング
- 首の辺りを後ろ足でかく
- あくびをする
- 口をペチャペチャする
- 目の端に白目が見える
- 口を硬く結ぶ
- 眉間にしわを寄せる
- 筋肉の凝り
- ぶるぶる震える
- 些細な刺激に過剰反応する
- すぐ吠えて、なかなか吠えやまない
- シャンプーしても体がくさい
- 毛づやが悪い
- 免疫システムの混乱
- アレルギー
- 眠りが浅くてすぐに起きる
- 夜中に突然吠える
- 歯をカチカチ鳴らす
- 石など、食べ物でないものを食べる
- むら食いや食欲不振
なぜ分離ストレスになるの?
それでは、犬はなぜ分離ストレスを抱えるようになるのでしょうか。
分離ストレスのリスクファクターは以下の通りです。
- 罰を使った訓練
- 親兄弟から早期に引き離された
- 子供の頃ひとりでいすぎた
- ケージにしばしばもしくは長く入れられていた
- 今までかまってもらえた同居人と接する時間が減った
- 毎日のスケジュールの大幅な変更
- 引越し
- 同居人のかまいすぎ
- 抑うつ
- 留守番のトラウマ的な出来事
- 過去のトラウマ
- 保護団体などから里子にもらった
- 留守番にならす失敗
- 家族の長期不在
- 新たな家族が増えた
- 認知機能障害
分離ストレスの予防
分離不安ストレスを防ぐには、1歳になるまでの間、我慢できないほどの時間をひとりにしないということが重要です。
幼少期のストレスフルな体験は、脳のストレス媒介システムである副腎皮質刺激ホルモン放出因子に持続的な変化をもたらすということがわかっています。
夜寝るときには犬をケージなどで寝かせるようになどと言われることがありますが、これは分離ストレスのリスクファクターを増大させます。犬を迎え入れたときから、人間のそばで寝かせてあげましょう。
すでに分離ストレス行動が見られる場合の対処
それでは、すでに分離ストレス行動が見られる犬については、どのように対処したらいいでしょうか。
まず第一に重要なのは、ストレスレベルを下げることです。それだけで、多くの症状は大幅に改善されます。
具体的には以下のように対応しましょう。
- 食事時間と散歩時間をきちんと決めて、規則正しい生活をおこなう
- 静かな場所で、ゆっくり歩く、のんびり散歩をおこなう
- 犬が静かに落ち着けるように、住環境をととのえる
- 叱ったり命令したりせずに、穏やかに接する
尚、トレーニングやドッグスポーツなどは、たとえおやつをつかった「犬にやさしい」やり方であっても、ストレスになります。
また、ドッグランなどで走らせたり、旅行や外出に犬を同伴したりするのも、犬を興奮させてストレスをかけます。それよりも犬をゆっくり休ませてあげましょう。この休息が非常に大切です。
犬を人間から隔離すると症状は悪化しますので、サークルやクレートは撤去して、すべての部屋に自由に行き来できるようにしてあげましょう。
寝るときにも寝室に入れてあげます。犬が不安そうにしていたら、そばに付き添ってあげます。犬をひとりにしておく時間が最小限になるように、工夫してください。
室内にいるときは、人間の声や音、テレビの光などを極力少なくし、犬が静かに過ごせるようにします。
家族の言い争いや喧嘩なども症状を悪化させますので、気をつけましょう。家族のメンバー全員で、思いやりを持って穏やかに犬に接するように協力しましょう。
こうした暮らしを何ヶ月か続けていると、犬は次第にリラックスしてきます。
そうなったら少しずつ留守番時間を延ばしていきます。留守番時間は、人間が外出している間、鳴いたり家具を齧ったりせずに、ゆっくり寝た状態で待っていられる範囲内にとどめます。
留守番中の犬の様子を動画撮影するといいでしょう。
もし分離ストレス行動が見られたら、それは留守番時間が長すぎるということです。
耐えられないほど長いあいだ留守番をさせると、ストレス症状が悪化しますので、慎重にすすめましょう。また、留守番時間は長くても6時間以内にとどめます。それ以上になると、どんな犬でもストレス行動が増えます。
犬も同居人もお互いに、楽しく過ごせるように、常に思いやりと配慮を持って接したいものです。

