「もう1頭迎えたら、この子も楽しくなるかもしれない」
犬と暮らしていると、そう思うことがあるかもしれません。
犬は社会性の高い動物なので、犬同士で交流することは確かに自然なことです。
しかし、多頭飼育にはメリットもありますが、犬の性格や生活環境によっては大きなストレスになってしまうこともあります。
今回は、犬の多頭飼育について、犬の気持ちの視点から考えてみましょう。
犬は必ずしも仲間を欲しがっているわけではない
犬は社会性が高く、同じ犬だけでなく、人間や猫などの動物とも関係を築くことができる素晴らしい能力を持っています。
それならば犬には仲間がたくさんいたほうがいいと思う人も多いでしょう。
しかし、犬は必ずしも「犬の仲間」を求めているとは限らないのです。
人間との関係で十分満たされている犬もいますし、むしろ他の犬が苦手な犬もいます。
多頭飼育を考える時にもっとも大切にしたいのは、先住犬の意思であって、「先住犬が本当に他の犬を受け入れられるか」という点です。
多頭飼育を考える前に確認したいこと
新しく犬を迎える前に、いくつか確認しておきたいポイントがあります。
先住犬は他の犬と落ち着いて接することができるか
散歩のときに他の犬会ったとき、
- 強く吠えかかる
- 突進する
- 攻撃的になる
このような反応がある場合、他の犬と落ち着いて関わる準備ができていないということです。
犬同士の交流には、犬なりのマナーがあります。
例えば、
- ゆっくり近づく
- カーブをして近づく
- 顔を背けたりお辞儀をしたりする
- 静かに少しの時間におい嗅ぎをする
こうしたカーミングシグナル(犬のボディランゲージ)を出しながら、穏やかにコミュニケーションをとります。
このような行動が見られない場合は、いきなり他の犬を迎えると強いストレスになる可能性が高いです。

犬同士の相性
犬にも人間と同じように相性があります。
例えば、とてもおとなしい先住犬に、活発でエネルギーが強い犬を迎えたら・・先住犬は疲れてしまいます。
また、年齢差も重要です。
一般的には、
- 同性同士→3歳以上
- 異性同士→2歳以上
離れている方が、関係が安定しやすいと言われています。(年齢が近すぎると喧嘩しやすくなります。)
ただしこれも絶対ではありません。
はっきりした理由はなくても、犬同士で「なんとなく好き」「なんとなく苦手」ということもあります。
ですから、新しい犬を迎える前に、何度も会わせてみて、お互いに友好的な関係が築けそうだと確信してから迎えるようにしましょう。
もし、よく確認せずに迎えて仲良くならなかった場合、苦手な相手とずっと一緒に暮らすことになり、お互いに多大なストレスがかかります。
人間が気に入った犬を迎えるのではなく、先住犬の気持ちを第一に考えてあげることが大切です。
先住犬のストレス状態も重要
犬が新しい仲間を迎えられるかは、先住犬の気持ちのゆとりにも関係します。
先住犬が十分に落ち着いているか
先住犬に
- よく吠える
- 興奮しやすい
- 散歩で強く引っ張る
- 他の犬に攻撃的になる
といった行動がある場合、ストレスレベルが高い状態にあります。
その状態で新しい犬を迎えると、ストレスがさらに増えてしまいます。
行動は犬同士で影響しあう
犬はお互いの行動から多くを学びます。
例えば、
- 落ち着いた犬は子犬に社会性を教える
- 不安な犬が後からきた犬に警戒心を伝える
どちらも起こります。
そのため、先住犬にストレス行動がある場合、それが後からきた犬にもその行動が伝染します。そして互いにストレスをかけあうという悪循環に陥ります。
新たに犬を迎えるのは、先住犬のストレス行動がなくなって、十分落ち着いて行動できるようになってからにしましょう。
人間側の準備も必要
多頭飼育では、犬だけではなく人間側の負担も増えます。
散歩や世話の時間が増える
犬が2頭になると、
- 食事の準備
- 健康管理
- 身の回りのお世話の時間
- 食費や医療費
すべてが倍になります。
散歩も「2頭一緒でいい」と思うかもしれませんが、それではお互いに満足できません。
犬によって、
- 行きたいコース
- ニオイを嗅ぎたい場所
- 歩く時間
などが違うからで、一緒に行くことにより散歩の質は低下し、日々のストレス解消が不十分になります。
また、1頭ずつの散歩には、同居人と1対1で関われる大切な時間でもあります。他の犬を気にせずに、同居人に思う存分甘えることもできる貴重な時間なのです。
犬同士のトラブルへの対応
犬が増えると、どんなに仲が良くても小競り合いが起こることはあります。
そんなときは
- タイミングを逃さず早期に介入する
- 黙って穏やかに2頭の間に入る
- 落ち着いた隙に2頭を引き離すように誘導する
このように犬同士が使うカーミングシグナルで対応します。
放置していると、本格的なけんかに発展してしまいますし、お互いに対してどんどん悪い関連付けをしてしまいます。
また、家の中では、ゆっくり休める安全な場所を確保する必要があります。そういった意味でも、犬の数は2~3頭が限度といえます。
多頭飼育のメリットとデメリット
最後に、多頭飼育のメリットとデメリットを整理してみましょう。
多頭飼育のメリット
相性が良い犬の場合、
- 犬同士で遊べる
- コミュニケーションが豊かになる
- 社会的欲求が満たされる
といった良い影響があります。
また、よく社会化された成犬がいる場合、子犬に犬社会のルールを教えてくれることもあります。
これは人間ではなかなかできない、大切な学びです。
多頭飼育のデメリット
一方で、先住犬の社会化が不十分で、ストレス行動がたくさんある場合だと、
- 犬同士のストレスとその連鎖
- ケンカ
- 同居人の負担増加
といった問題が起こります。
最も大切なのは、犬の生活の質(QOL)が下がらないことです。
新しい犬を迎えることで、先住犬のストレスが倍増してしまうのは本末転倒です。
多頭飼育は、犬にとっても人間にとっても余裕があるときにこそ、楽しいものになるといえるでしょう。

